桃の節句



実家から携えてきた大荷物を漸く紐解く。しかしながら、問題発生。小物類はほぼ揃っているのだが、準主役の8人が行方不明。家中を捜索するも発見できず。引越しのバタバタの中でどこかに紛れ込ませてしまったようだ。既に階段を設えてしまったが、二段目、三段目がガラ空きになる。仕方ない、やっぱ片付けるか、などと話してたら、こういうのが大好きなガキ達は、びっくりするほど失意の態で、嫌だ嫌だ、なんとかしてよ、と泣きだす始末。でも、浅草橋あたりの人形屋に買物なんてとてもじゃないが行けない。苦肉の策で、別に小型のねずみ版雛人形があったので、そこから8匹を借りてきて、珍妙な雛壇を構成してみる。ところが、そんな話を義母にしてたら、義姉誕生の折、四国から送られてきた人形があるから、とすぐに持って来てくれた。多謝。妻は長らく眼にしたことがなかったので念頭にはなかったらしい。人形の作風もあまり写実志向でないあたり、さして違和感なく収まった感じで、少なくともぬいぐるみのねずみとは比較にならない。ガキ達は大喜びで、参考図を頼りに人形の手に食器や楽器を持たせる作業に熱中していた。田舎の家は設置スペースには事欠かなかったが、今や食卓のすぐ隣に人形達が居並んでいる。昔から見慣れてきた筈なのだが、常時視線が合うような距離で接していることで何か親近感が増した気もする。