根津神社

文京区には花の五大祭りというのがある。湯島天満宮の梅と菊、播磨坂の桜、白山神社の紫陽花と、根津神社ツツジである。そのつつじまつりで妻の先輩の娘さんが踊りを披露するからということで初めて根津神社を訪れた。行ってみると「御遷座300年記念」の看板が目に入る。どうせ学生能の頃に毎年謳っていた世阿弥生誕600周年の扱いと同じようなもんだろうと思ったが、よく見ると本当に1706年に徳川綱吉の兄の屋敷であったこの地にそれまでの千駄木の地から綱吉が移転させたらしい。江戸時代の三大天下祭といえば、神田明神と山王日枝神社と此処なんだそうだ。文京音頭やら何やらの子供衆の踊りは可愛い面もあったが、総じて楽しそうとは言い難かった。観衆のばあさん達の方が舞台周囲で飛び入り参加して興じていた。長女は柵を乗り越え、ツツジが群生する中にタタッと潜入する。密度の濃い塊がいかにも強固な障害物みたいで娘の後を追って緑と花の中に分け入りたい衝動に駆られたが、周りの大人達の視線を意識して、こら、やめんかと叱るにとどめた。本当は自分もツツジ畑の中をザクザク縦横無尽に闊歩したかった。