雨の合間


常宿に泊まるのもあと僅か。結局のべ2ケ月くらい過ごしたことになるか。オフィスから徒歩7分、空港からなら30分、非常に重宝した。日本からKL便で夜の10時半に着き、ガラガラトランク引きずって11時頃に辿りつくとホッとしたものだ。最初はホテルの朝食を当然のように食べていたが途中から1食3.9ユーロが高く感じるようになり、部屋にクロワッサンを買い込むようになった。窓の外が冷蔵庫代わりで、常時牛乳や飲料を置いていたが、チーズはカビが生えた。昨夜はキウイが風で飛ばされた。
今週は気温は5度前後の日が多くさほど寒くはなかったが、風雨が激しかった。嵐めいた天候は通常は11月頃のものらしい。「こういう悪天候は本来北のものなんだよ、そう、ダブリンあたりの、、」で、今日は、そのダブリンで行われたラグビーの6ネイションズのフランス対アイルランド戦をTVで観た。「アイリッシュは決してギブアップしないんだ」その不屈の精神はフランスでも知られるところらしい。大観衆の殆どが自国チームを応援する中、試合は大接戦だったが、残り1分で一度突き放されたフランスが相手の油断をつく劇的なトライで再逆転勝ちした。アイルランドの強烈な突進力とフランスの試合巧者ぶりが出た好ゲームだった。たぶん明日のオフィスでも話題になるだろう。
先週はパーティをしてもらったとか書いてるが、いい加減私の存在が珍しくもなくなってきており、私も仏人とはまったく対照的に無口なものだから、普段3人以上で食事に行くときは、会話の95%以上が仏語になる。一生懸命耳をそばだててみるのだが、大統領選の話なのかサッカーの話なのかすらさっぱりわからない。皆の前でポカンとした面をさらしているのは、ばつが悪く、レストランであれば、外の景色を眺めたり、MENUとにらめっこしてみたりするのだが、あんまりそっぽを向いているのが自然とも思えない。周囲の連中が笑っている以上、自分も笑顔でいた方がいいのかと考えるが、わかったふりをするのはむなしい。たまに彼らの方から、今こんな話をしているのだ、と解説してくれたりするのだが、私も無愛想に、あっそう、ぐらいにしか反応しないので、またすぐ蚊帳の外になる。彼らに尋ねれば、英語で親切に教えてくれるのだけれど、かと言って質問するのをためらう気持がある。なぜなら、言語を英語に代えたところで、猛然としゃべり続ける彼らの勢いは止まらず、仏人同士ではよく通じているその英語にすら私がついていけなくなることがあるからだ。一度質問する機会を逸したまま、話がどんどん進んでいくと会話を遮るのはますます億劫になる。私のために英語で話しているのに、やっぱり私だけが理解できていない。これはかなり辛く情けない。もういいから君達、お願いだから仏語でしゃべってよ、というやけっぱちな気分になる。そんなこんなで、私は明日もフランス語の嵐の中で、時に眉間に皺を寄せたり、時に苦しい愛想笑いをしたりしつつ、基本は無表情で、だが内心は悶々としているはずだ。