2008年の抱負

今年の抱負は、日本で生活を再開すること。
だが、果たして1年間の在仏を通じて知らされ、染み付いた、この国のマイペースな習慣、のんべんだらりした時間感覚、労働週35時間、バカンス年5週間の勤労観は、自分の本邦社会復帰を容易に許してくれるだろうか。それを思えば、決して簡単な抱負ではないのだ。
だいたいワーキングホリデーから戻ったとかならまだましも、フランスでただぶらぶらしていた妻子持ち中年が就職活動をしたって日本の企業社会から歓迎されないことはおよそ想像に難くない。まあ、だからこその妙味もなくはない訳で、面食らい、七転八倒するダメぶりを笑える余裕を持っていたい。
日本を離れていたことでの再発見もある。和食である。フランス料理を全否定するつもりはない。特に平日も週末も朝7時から開いているパン屋の1本1ユーロ以下の焼きたてバゲットを食するのは至福の瞬間である。しかし、バターは無くても困らないが、御飯と魚も自分に欠かせない食べ物で、パンのみでは我慢がならないことに気がついた。帰国後行きたい場所として一番に思い浮かぶのは、築地だった。その想いが嵩じて、寿司教室へ通うことまで決めてしまっている。
プロでなくても、もうちょっと心得があれば、もっと周囲の外国人連中をうならせることができたのに、という残念な想いをし、その気持の冷めないうちに今やりたいことをやろうと思った。SUSHIを通じて海外で魚食需要が伸びているのは、漁業と流通業には明るい話題ではないのか、そのへんも知りたい。
活魚を解体して食すこともポイントだ。昨夏、東京の居酒屋で仏人にアジの活作りを振舞った際、彼は「あの眼が自分を見てる〜」と怖がって箸をつけようとしなかった。それを笑った一方で、果たして自分は肉食の自覚がどれだけあるのかと思った。肉のルーツ探しを単純化するなら、生きている彼らを自分で殺せばいいのだ。でも、焼き鳥を食べる前に、鶏の首を絞めて毛を毟って細かく刻んで串刺しにするのは、手間がかかり過ぎる。それ以前に、苦しみにもだえる鳥の喉元を渾身の力で握り締める勇気がない。ただ、想像力を持ちたい、と思った。来月公開のFast Food Nationは観るかも知れない。ファーストフード好きだし。そういえば原作を出版してたのは草思社だった。
経済はどうなるのか。円が高くなった、と言われているが、それは対ドルの話であって、対ユーロなんかはもう何年も円は下がり続けている。欧州景気が好調とも思えず、日本人の方がはるかに長時間労働しているのに、どうしてこんなに強弱がつくのだろう。欧州勢の立ち回りの上手さがあるはずだ。3年前に欧州憲法が否決されたとはいえ、今年後半のEU議長サルコジは精力的にリーダーシップを発揮するだろう。米英が信用収縮で危ぶまれていて、もちろんそれは既に織り込み済みだろうが、もしかしてそこまで見越してこその親英米派宣言だったのだろうか。
今年は中国でオリンピックもあることだし、ついでに来日する外国人観光客も増えると思う。東京は真新しい建物が多いし、道が綺麗だし、コンビニはある。その上、何が魅力かって、かつてのイメージとは反対に、あらゆる値段が安いのである。夏場など六本木や銀座で豪遊する外国人が多く見られるんでないか。浅草の景気にも追い風かも知れない。土産品には炊飯器が喜ばれると思うが、ちょっとかさばるか。そもそも日本製炊飯器を海外で買える通販サイトとかあるんだろうか?Amazon.com にはあるけど、.frにはまだなさそう。どなたか知ってたら教えて下さい。ということで、食欲はあれど職欲どこへやら明日は知れず今日は小正月