2ケ月ぶりの休日
7、8月のトップシーズン。昨年は職探しでプラプラする毎日だったが、今年は一転フルで皆勤することができた。休みなしといっても、所詮スペイン。自分の場合、最長でも1日16時間、通常は14時間程度だった。同僚達はもっと少ない。基本はレストランが開店する昼の12時が出勤タイム。同僚の中には1日かっきり8時間しか働きたくない、という奴もいて、10分でも超過するのを凄く嫌がったりする。自分は客が来ていて料理を提供しなくてはならない時に同時にネタケース準備したり魚の掃除とかする方がもっと嫌だが、かといって同僚にもっと早く来いと説得する気にもなれず自然一人10時半には店に出てた。なにしろ日本の寿司屋に比べたらどってことない。魚は魚屋が届けてくれるし、冷凍物が多い。塩・酢を使った仕込みはない。人気の鰻だって冷凍蒲焼パックを開いて切って炙るだけ。象徴的なのは、こっちのシェフ達は柳の次の包丁には薄刃を欲しがる傾向にあることだ。出刃ではないのだ。接客も皿洗いも配達も専用要員がいて役割が分担されており、自分の担当以外のところが忙しくても手伝わなくていいのも日本では考えられない。
大変なのは、肉体的にも疲労してくる1日の最後にやってくる夜の9時から11時くらいのピークタイムで、注文から提供まで1時間かかる日を何日も作ってしまった。もっと準備がしっかりしてれば早くこなせたし、そもそも自分の作業スピードも未だ瞬発力に欠けて遅かった。キッチンは、夏前までいたアルゼンチン人2人とドイツ人が抜けた後、ベトナム人、中国人、途中からギリシア人、チリ人も加わって計3〜5人で回していたが、時間がかかることはあっても、料理の質もチームワークも悪くなかったと思う。ただ、システム的にもサービスのレベルは低かった。流れてくるオーダーを機械的に早い順にこなしていると、ちょっと食べ足りなくての追加注文の河童巻1本出すのにも1時間かかったりで、これでクレームがない方がおかしい。クレームと言えば、25年間肉を口にしたことがないベジタリアンのおばさんに野菜春巻と間違えて普通の豚春巻を食わせてしまう事件があった。6人分の食事代がフリーになった。食事中に自宅が空き巣に入られる客もいた。皆が忙しくしてるドサクサの中、チップ集金箱の金に手をつけたのを目撃され、盗った、盗ってないの騒ぎになって、それに二日酔い出勤が加わり、結局解雇になったウェイターもいた。クレームも妙な事件も飲食業には付き物なんだろうけど。事件と言えば、7月中旬のある日、店に来てみたら、看板が外されつつあって何かと思ったらオーナーの決断による店名・メニュー変更で、オーナー自身の予想より早く業者が作業に取り掛かっていたということだった。その日の昼いっぱいで旧メニューは終了。夜からいきなり新メニューで現場はなかなかの混乱だった。
スペインならではなのは食事の開始が遅いこと。これは決定的に自分には馴染めないところ。7月中盤から8月いっぱいはオーダーストップを夜の12時にしていたが、ファミリー客が本当に夜の11時過ぎに普通に食事をしにくる。12時を過ぎてるのに乳母車の子供は起きてて、もう少し大きい子達は店内を走り回って遊んでたりする。そして客はほぼ全員外のテラスに座る。日中、暑い間は外を歩く人通りも全然なかったのに、どこから人が沸いてくるのか。キッチンから視界に入る室内テーブルには誰も座っていないのにオーダーだけは外部の闇の中から続々と押し寄せる。まるで見えない敵と戦っているようだった。ウェイター達に言わせると、ドイツ人は長くてもキッカリ2時間で帰っていくという。彼らは7〜8時位から食べだして、彼らが帰った後にスペイン人達がやって来る。スペイン人は長い。金は使わないが、長々としゃべり続けて1時を過ぎても帰らない。社員が開店時間に出勤してる店側だが、ここでは、そろそろ看板仕舞うんで・・などとは言わず、最後の客が帰るまで辛抱して待っている。