ビザ諸々

初めてフランス大使館を訪れたのは10月だった。弁護士に頼む道もあったようだが、ビザくらい自力で取れんでどうする、と思った。初訪問は、午前中の11:30で受付終了なのを知らずに11:45に行って無駄足になった。時間通りに行っても窓口の女性の対応はなんか冷たい。「ホームページに書いてある通りです。」の一言で片付けられ、あまりグッド・サービスがいいとは言いがたい気配。履歴書、卒業証明、身分証明、戸籍謄本、源泉徴収表、海外旅行保険、これらを有資格者の手で仏語に翻訳、警視庁で無犯罪証明書を入手し、99ユーロを支払い、何度か出直しを経て一応書類を提出したのが、11月。12月に2回に分けて追加書類を要求され、2月になってビザが用意できたと大使館から連絡があった。いったん大使館に預けたパスポートを3日目にビザを貼付してもらって受け取る。
その翌日、フランスに入国。で、今週ボルドーの移民局ANAEM(Agence Nationale de l'Accueil des Etrangers et des Migrations)に行って、フランスでの生活心得みたいなガイダンスと健康診断に仏語のテストを受ける。20人位をひとまとめにしたガイダンスは、通訳が付き、2ケ国語で説明があったのだが、通訳が話す言語はなんとアラビア語であった。移民の大半がアルジェリアチュニジア、モロッコなどのアフリカ勢だかららしい。説明がビデオになった時だけ、ケータイみたいな音声機械が配布され、英語で聞けた。中国語でも聞けたようだ。革命以来の人権宣言(Liberte, Egalite, Fraternite)や2004年から回教徒の学校でのスカーフ着用禁止や、外国人の権利と義務についての話。話の後、Contrat d'accueil et d'integrationという契約書にサインをさせられ、市民の心得みたいなテーマの1日がかりの講習会に来月2回出席することを約束させられる。(義務ではないらしい。)
健康診断の前に、胸のレントゲン写真、1人の医者が聴診器を持っていたと思ったら、耳の穴や虫歯のチェックまでするのが日本と違うところか。異常なし。仏語テストは、たぶん私が最低点だったと思う。価格表みたいなのを見せられ、「どの値段が一番高いか?」という質問に対して、最安値を答えてしまった。先生から「I give you 400.」と言われる。何のことか、と思っていたら、指定の仏語学校に400時間通え、という意味なんだと。これも義務ではないが、400時間まで無料で授業が受けられるらしい。
日本ほどではないにしろ、外国人に対する高い敷居を感じてきたが、いざ滞在権を得ると外国人でもそれなりのベネフィットがあるようだ。オフィスの同僚に、君達の税金で俺がタダで授業を受けられるって嫌じゃない?と聞いたら、でも、我々は移民を受け入れて成長してきた。また、資格を持っていても教師が職を得るのは難しいんだ、と私の手前もあるだろうが、政策に肯定的な回答だった。しかし、いずれにせよ、ユーロで給料でもらうためには、まだ手続きが足りない。
ANAEMの翌々日、言われた通りに県庁の窓口に行く。1時間行列したが、雇用契約書が仏語ではなく英語であったため、はねられる。ついでに、申請する役所は県庁ではなく、市の警察署だと教えられる。オフィスに戻り、仏語の契約が見つからなかったので、プリントアウト&サインし直し、Merignacの警察署へ。今度はビザの注記で注文がつく。salarie(給与所得者)とあるべきところがcommercant(商業者)だからと。また、ANAEMからもらっているべき書類が足りないらしい。ANAEMに電話して、彼らが私に渡し忘れたらしいことを知る。長い長い道のりが続く。なにやってんだか、どうなることやら。