魚河岸紀行

自宅に一番近い大通りは国道6号線こと、江戸通り。この道、別名、水戸街道を北上し、言問橋の左詰めY字を白髭橋方面ではなく、言問橋南千住線、通称吉野通りに入る。南千住の商店街を越えれば昭和通り国道4号線(日光街道)を右折し、すぐに隅田川を渡る千住大橋。橋を降りたところで右折すれば、東京中央卸売市場足立市場。自宅から10分強の距離。1689年、松尾芭蕉が弟子達に別れを告げ、奥の細道行に旅立ったのがこの地、千住宿。橋の反対側の素盞雄(すさのお)神社境内には、矢立の句「行く春や鳥啼き魚の目は泪」の碑が建つ。世の不景気で市場の仲卸達は慎重になっているようで、築地に比べたら魚の種類や量はぐっと少ない。師走の書入れ時なのになかなか天然寒鰤が入らずに困っている。氷見を始め北陸の水揚げが未だ少ないらしい。やっと手に入れた今日の訳ありブリの賄いの照り煮は実に旨かったけど。築地ほど広くなくこじんまりしている点は動くのに疲れない意味ではいい。毎朝足立で築地には高級マグロや手に入りにくい魚を求めて週一程度というのは要はその方が早いから。魚市場横の喫煙スペースに白カブを留めて馴染みの魚屋へ挨拶。魚屋さんは、昨晩の注文通りに魚をバイクの荷台に積んでくれる。特に光物と貝類は早めに仕込を進めるために持っていきたいところ。魚の頭が落としてなかったりすると、それを待ったりする間、昆布茶や缶コーヒーで温まる。魚屋さんは一生懸命魚を選ってくれる。「おたくに悪い魚出すと、すぐ怒られっからなー。」市場からは昭和通りを南下。三ノ輪を過ぎたら右の金杉通りへ。原付だから、面倒でも二段階右折。途中金美館通りを左に行けば、1999年〜2001年に暮らしたかつての入谷の我が家。言問通りを右折したら、鶯谷駅横の陸橋をわたるのが近道。客待ちタクシーの列を横目に突き当たりを右折すると国立博物館寛永寺霊園の間の道が続く。この辺、緑が多く雰囲気がよい。道なりに進めば左にモダンな文化財研究所、右にレトロな国際子ども図書館があり、左前方に奏楽堂が見えたら右折し、芸大前を突っ走る。上野桜木エリアに入ったら、道なりに大黒天、都立上野高校前を通る。定時制上野高校はバスケで全国優勝したらしい。高校の隣は上野動物園。動物園の向かいには旧森鴎外住居跡に立つ水月ホテル。SUIGETSUをフランス人観光客は「シゲツ」と読んでいた。ホテルの角を右折すると、ルネッサンスタワー上野池之端に次いで得意客の多いライオンズマンション上野の森。その斜め向かいには池之端児童遊園と行き先が表示された都電の車両がある。おそらくかつての停車場の名残なのだろう。動物園に沿って進めば不忍通りに出て、湯島方面へ進めばすぐ右手に店がある。自宅から魚河岸経由で30分程。到着次第、朝の仕込みが始まる。